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仙台高等裁判所 昭和58年(行コ)2号 判決

右当事者間の換地処分無効確認請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。(主位的に)被控訴人が控訴人に対し原判決添付物件目録記載の土地につき昭和五一年三月二三日付でなした換地処分は無効であることを確認する。(予備的に)被控訴人が控訴人に対し原判決添付物件目録記載の土地につき昭和五一年三月二三日付でした換地処分を取消す。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加補充するほかは原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  控訴人

1  被控訴人は、Cが被控訴人に提出した本件土地の分筆異動届をもつて換地不交付の申出にあたるとし、その根拠として、右届出書には本件土地に対応する換地地積の記載がないこと及び同届出書添付の換地分割図上、本件土地については仮換地外国道敷の部分とされ、仮換地全部が分筆後の(二)ないし(五)の土地の換地のように表示されていることを挙げている。しかし同届出書添付の換地分割図上、本件土地だけではなく、分筆後の(二)ないし(五)の土地の一部も道路敷上に表示されているのであるし、右分筆後の(二)ないし(五)の土地の地積の合計と本件仮換地ないし換地の地積とが一致するわけでもない(分筆後の(二)ないし(五)の地積合計は一二七・七六坪であるのに対し、本件仮換地の地積は一二〇・五坪、本件換地の地積は合計四二三・六八平方メートル=約一二八・三八坪である)から、右届出をもつて換地不交付の申出とみることはできない。のみならず、従前の土地を分筆した場合には、分筆された各筆に対応して仮換地も同じ筆数の土地部分に分かれることになるのであるから、分筆後従前の土地のうちの一筆の土地についてなされる換地不交付の申出は、これに対応する仮換地上の土地部分について、その本換地に代えて清算金の支払いを求めるという趣旨のものでなければならない。したがつて、従前の土地を分筆した結果生じた本件土地について、仮換地外の国道敷がこれに対応するものとしてなされた右届出は換地不交付の申出としては全く無意味であり、また、本件土地に対応する換地が存在しないことを前提として、いわば減歩分について換地不交付の申出をすることは減歩の回避ないし換地と清算金の二重請求に外ならず、法律上許容する余地のないものである。

2  換地不交付の申出により、換地の交付を受ける権利は清算金の交付を受ける権利に変わるが、その清算金を受ける権利は換地処分の効力が発生するときに初めて具体的かつ現実のものとなるのであるから、換地不交付の申出は、換地処分時が少なくとも換地計画作成時になされるべきであり、したがつて、それ以前になされた換地不交付の申出は、その後、当該従前地の所有権を取得した者に対しその効力を及ぼさないものというべきである。

3  換地処分に伴う清算金の算定は、分筆後の各筆につきその従前の土地の位置形状等を確定し、換地上これに対応する部分をそれぞれ定め、不均衡是正調整金の計算もなしたうえで、換地不交付の申出がなかつたならば交付されるべき換地の価額と不均衡是正調整金について換地処分時の時価をもつて算出すべきものである。このことは、本件のように換地不交付の申出がなされた土地に照応する換地が他筆の換地に指定されている場合(かゝる指定自体違法であるが)であつても何ら変わることはない。しかるに被控訴人は、本件土地の清算金を算出するにあたり、本件土地及び分筆後の(二)ないし(五)の土地について、それぞれ従前の土地の位置形状を確定せず、右各土地の換地上の位置等も不明確なまゝ恣意的に路線価を算定しているうえ、分筆後の各筆について個別に価額の算定をすることなく、仮換地全体について従前の土地との比較をしているに過ぎない。

したがつて、換地上本件土地に対応する部分を失うことによる損失補償の金額を計算することなく、単に昭和三四年の時点における従前の土地の路線価によつて清算金を算定した本件処分は、土地区画整理の基本原則である照応の原則に反し、かつ憲法二九条三項に違背するものというべきである。

二  被控訴人

1  土地分筆異動届をもつて換地不交付の申出とみるべきか否かは、その届出の意思解釈に帰着するところ、先に主張したとおり、土地区画整理事業についての行政実務上、換地予定地指定後に従前の土地が分筆されたときは、その仮換地上の使用収益範囲を特定した分筆異動届という様式の書面を所有者から提出させているが、本件Cの場合のように分筆後の土地のうち一筆につきそれに対応する換地地積の記載がなく、残余の土地について記載されている換地地積の合計が仮換地の地積と一致する場合には、右分筆異動届は、通常換地不交付の申出として扱われており、右Cは本件土地区画整理事業の整理委員として右のような行政実務上の取扱いを知悉しており、同人自身、本件土地については清算金の交付を受ける意思を有していたことが被控訴人に明らかであつたことなどを併せ考えると、同人がなした分筆異動届によつて、法九〇条に定める換地不交付の申出があつたものと認めるのは至当なことである。なお、分筆後の(二)ないし(五)の土地と仮換地の地積とが若干不一致なのは測量誤差によるものである。

2  本件土地に関しては、もと分筆前の一筆の土地に対応する仮換地が指定されていたところ、その従前の土地を、仮換地の実測地積に相当する数筆と、減歩された分に相当する一筆(本件土地)とに分筆し、その減歩された地積に相当する一筆分については換地を定めないこととする趣旨の申出がなされたものであつて、仮換地指定前に換地不交付の申出がなされたため換地不交付となつた場合とは趣を異にする。したがつて、本件土地に対しては、不均衡是正調整金としての性質を有する清算金で足りるものというべきである。また、控訴人は、本件土地の評価の基準時点は換地処分時又は換地計画作成時となすべきものと主張するが、土地区画整理事業は長期間を要するのが通常であり、また、従前の土地の価値は右事業の進展に伴つて大きく変動増加する等の諸事情を考慮すると、土地評価の基準時点は、仮換地の使用収益を全面的に開始した時点、すなわち工事概成時とするのが適正合理的である。なお、本件清算金の計算をするにあたつては、本件土地及び分筆後の(二)ないし(五)の土地につき再確定測量によつて精査した地積に基づき、各土地の位置、形状等を考慮して算定しており、控訴人主張のような違法はない。

理由

一  当裁判所も控訴人の主位的請求は理由なきものとして棄却すべく、予備的請求は不適法として却下すべきものと判断するが、その理由は、次に付加訂正するほかは原判決理由に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決二九枚目表四行目「乙第一八号証」から次行の「乙第二二号証の一・二」までを「乙第一八ないし第二二号証の各一・二、乙第二三号証」と改める。

2  同三〇枚目裏二行目「分筆後の」の次に「(二)、(三)の各土地及び」を加え、同五行目「換地分割図」から同七行目末尾までを「換地分割図においても、本件土地の全部及び分筆後の(二)ないし(五)の土地の各一部が道路敷部分に該当し、本件仮換地はすべて分筆後の(二)ないし(五)の各土地の残部に該当するものとし、本件土地については本件仮換地上に対応する部分がないものと表示したこと、」と改める。

3  同三一枚目表八行目末尾に「そして、Cは前記のとおり土地区画整理事業の土地整理委員をしていたことから、右のような分筆異動届が換地不交付の申出として取扱われることを知つていたこと、」を加える。

4  同三二枚目表四行目「換地不交付の申出」から同八行目末尾までを「換地計画を定めるためには各従前の土地の権利関係、地積、価額等の調査をしたうえで、土地区画整理事業対象地全体についての換地設計を行い、町名地番の整理、清算金額の算出その他諸般の膨大な作業を伴うため、土地区画整理事業は、その開始から換地計画作成までに相当の年月を要するところ、その間、換地不交付の申出をなしえないとすると、かえつて換地計画の立案を阻害することになるのみならず、従前の土地の権利者にとつても必ずしも利益とはならないものというべきであること等」と改める。

5  同三二枚目裏八行目の末尾に「この点につき控訴人は、従前の土地のうち道路敷とされているのは本件土地のみではなく分筆後の(二)ないし(五)の土地の一部も道路敷とされており、また右(二)ないし(五)の土地の地積と従前の土地全体の仮換地地積とが一致するわけでもないからCがなした分筆異動届をもつて換地不交付の申出とみることはできないと主張する。たしかに前掲乙第一号証の一ないし三によれば、右分筆異動届添付の換地分割図上、分筆後の(二)ないし(五)の土地の一部も道路敷にかかるよう表示されていることが認められるうえ、右各土地の地積合計は一二七・七六坪であるのに対し、仮換地の地積は一二〇・五坪であるけれども、右仮換地はすべて右(二)ないし(五)の土地のうち道路敷以外の部分に該当するものとして届出されているのに対し、本件土地は仮換地上に該当部分はなく、すべて道路敷部分に該当するものとして右届出がなされたことは前記認定のとおりであるから、右の地積の相違等を考慮しても、右届出をもつて換地不交付の申出と解さざるをえない。」を加える。

6  同三四枚目表一行目の末尾に、「なお、控訴人は、仮換地指定後に従前の土地を分筆した場合、その分筆された各筆に対応して仮換地も同じ筆数の土地部分に分かれることになるのであつて、分筆後の一筆の土地についてなされる換地不交付の申出は、これに対応する換地上の土地部分について、その交付に代えて清算金の支払いを求めるという趣旨のものでなければならないから、本件土地について道路敷がこれに対応するものとしてなされた本件分筆異動届は無意味であり、また、本件土地に対応する換地が残存しないことを前提に、減歩分について換地不交付の申出をすることは、減歩の回避ないし換地と清算金の二重請求となると主張する。しかし、仮換地の指定後、従前の土地が分筆されて所有者を異にする二筆以上の土地になつた場合には、施行者により各筆に対する仮換地を特定した変更指定処分がなされない限り各所有者は仮換地全体につき各自の所有地積の割合に応じ使用収益権を行使する準共有関係が生じるに過ぎないことは右にみたとおりであり、このような場合、分筆後の一筆の土地については換地を要しないものとし、仮換地全部を他筆の換地とすべきものとしてなされた換地不交付の申出は、換地を要しないとする一筆の土地につき、準共有関係にある仮換地が本換地に移行した際に支給されることあるべき清算金をもつて満足する旨の意思表示と解される。その結果、他筆の取得者が一般の減歩率より有利な割合の換地を取得する結果となつても、それは同一の従前地所有者から分筆取得した者相互間のことであつて、他の従前地所有者との間に不均衡を生ずることはない。これは後段に説示するとおり、徴収清算金又は交付清算金によつて是正されるべき事柄であるから、減歩分について換地不交付の申出をすることが減歩の回避ないし換地と清算金の二重請求になるものではない。したがつて、仮換地変更指定処分のない本件にあつては、仮換地上に各筆に対応する部分を特定するに由なく、また、特定する必要もない(すでに(二)、(三)の土地及び(四)、(五)の土地が仮換地に対応するものとして当事者間で特定されている)から、この点に関する控訴人の主張は理由がない。」を加える。

7  同三五枚目裏一行目の「影響を及ぼさない。」の次に、「のみならず、前記認定事実によれば、Cが従前の土地を分筆して(二)、(三)の土地をDに、(四)、(五)の土地をEに売渡した際、CとD及びEとの間に、本件仮換地はD及びEにおいて各々約二分の一を使用収益し、Cは右仮換地を使用収益しない旨の合意が成立したものというべきところ、右の合意はCの特定承継人である控訴人に対してもその効力が及ぶものというべきである(民法第二六四条、第二五四条)から、結局、控訴人はD及びE並びにその承継人との間では本件仮換地を使用収益する権利を有しなかつたことが明らかである。」を加える。

8  同四〇枚目表三行目の「相当である。」の次に「控訴人は、右清算金の算定は、分筆後の各筆につき、その従前の土地の位置形状等を確定し、換地上これに対応する部分を定めたうえ、換地不交付の申出がなかつたならば交付さるべき損失補償としての換地の価額と不均衡是正調整金の合計額をもつてこれを定めるべきであると主張する。しかし、すでにみたとおり、本件土地については仮換地変更指定処分はなされなかつたのであり、また、控訴人は他の準共有者との関係においては本件仮換地を使用収益する権利を有しなかつたのであるから、本件換地上に本件土地に対応する部分を定める余地がないばかりでなく、」を加える。

9  同四六枚目表四行目の「正当である。」を「正当であり、この点に関する控訴人の違憲の主張は採用できない。」と改める。

二  したがつて、控訴人の本訴請求中、主位的請求は失当として棄却すべく、予備的請求は不適法として却下すべきところ、これと同旨の原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中恒朗 裁判官 伊藤豊治 裁判官 富塚圭介)

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